投資用マンションのバリューアップ

概要

横浜市にある投資用マンションにおいて、コインランドリーを廃止し、各部屋に洗濯機用防水パンを設置するバリューアップ工事を行いました。



横浜市南区に位置する総戸数169戸の投資用ワンルームマンションは、その目的どおり賃貸入居者が95%を超えるというマンションです。

このマンションの住戸内には洗濯機置場がなく、入居者は館内に竣工時から用意された管理組合運営のコインランドリーを利用する形態でした。そのため、その後に乱立した周辺の賃貸マンションとの競争力に劣り、年々、入居率の低下傾向が表面化、同時に入居率低下は管理組合が運営するコインランドリーの収支に影響し、収支バランスが悪化する傾向も懸念されました。

入居率低下は管理組合財政と区分所有者の資産運用、その両方に重い課題となる事態が予測されました。

こうした課題に対し、コインランドリーの廃止と全住戸への洗濯機用防水パン設置という事業計画を管理組合の理事会にご提案させていただきました。

課題解決のための事業計画ですが、この事業を始動させ、完了を目指すには更なる多くの課題がありました。

160名を超える区分所有者の合意形成、高額な資金の捻出、長期化が予想される工期、100名を優に超える入居者の理解と工事協力、コインランドリーの廃止作業、などの課題です。

2012年の秋に発案、当時の理事会の同意と協力をいただきながら、仮称「防水パン設置計画案」は始動しました。

まずは、大型事業に欠かすことのできない資金の確保です。大型のワンルームマンションであり、そのスケールメリットにより良好な財政事情ではありましたが、20,000千円を超える費用は決して安くはありません。私たちは、日常の管理に支障のない範囲でのコスト削減を行い、長期的な資金計画を提案させていただきました。

次に、160名を超える区分所有者の合意形成への準備です。2012年秋から2014年3月まで十数回におよぶ理事会を開催し、現在までの経緯、タイプの異なる8種類のお部屋の防水パン設計と標準単価の設定、既に単独で防水パンを設置されている住戸への救済策、組合事業でありながら専有部工事であることへの対応策、などの事項を理事会開催毎に全組合員に発信しました。

2014年6月の通常総会に計画案を議案化することが決定しました。ここで弊社から最も高いハードルとして、コインランドリー廃止案を共用部分変更の特別決議とする提案をしました。そもそもコインランドリーはマンションの一部屋を区分所有者から管理組合が賃貸借し、機材を備えて運営管理する形態です。したがって、このコインランドリー室は区分所有法に言う共用部分ではないため、運営の廃止と閉鎖は共用部分の変更にはあたりません。しかしながら、竣工当初からコインランドリーとして開設され、多数の居住者が利用することを前提とした設備であり、区分所有者全員の利益に深く関係する設備であることを勘案し、敢えて、承認が困難となる特別決議を提案しました。

160名を超える区分所有者および議決権の4分の3以上の集票は容易ではありません。過去には管理規約の変更なども検討しましたが、特別決議での承認は到底困難という予測から、議案化が現実とならなかった経緯もありました。

提案の趣旨に同意いただき、総会開催までの集票作業に注力しました。総会開催案内資料を全区分所有者の方々が必ず開封していただける形式での配達方法、電話による到着確認と総会欠席者の意思表示を可能とする議決権行使案内などの様々な策を講じ、幸いにして圧倒的賛成多数で承認の決議となりました。

2014年6月総会での承認後、この事業計画案は案が取れて、正式に事業計画となり始動しました。入居者が生活する住戸が多数の中、工事日程の調整に多くの時間を要し、ようやく2015年1月、最初の住戸に防水パンが設置され、全住戸に防水パンが設置されるまで約2年間という月日を要します。

2年後、全入居者の快適性が向上することによって、懸念された入居率の上昇を区分所有者の皆様と同じ気持ちで期待しています。

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